第3節 国内市場の急伸長とレクサスの開発

第2項 「お客様第一」の再徹底

CR活動の強化

1980年代後半の急激な販売増加は、販売の第一線においても営業担当者の不足や車種によっては納期が間に合わない事態なども引き起こした。そこで、「お客様第一主義」の理念を実践するうえで、この間に明らかになった諸課題への対策を強化していった。

お客様との接点を重視するカスタマー・リテンション(CR)活動については、1985(昭和60)年に日進研修センターがその再構築策を打ち出し、各販売店で推進活動を開始した。しかし、販売店ごとに定着状況や意識レベルに差が生じていたため、1988年2月に研修センター内にCR推進室を新設し、オールトヨタとしてCR活動レベルの向上に取り組んだ。CR推進室にはトヨタのサービス部やC80推進室スタッフのほか、販売店も参画し、販売・サービス活動の研究や販売店への支援強化に乗り出した。

一方、販売店は好景気による人材の確保難に直面しており、採用の拡大と人材育成が急務となっていた。トヨタは1990(平成2)年2月に、販売店の営業担当者を「セールスマン」という呼称から「営業スタッフ」に改めるとともに、5月には計画的な人材育成を図るため「ステップアッププログラム」を導入した。このプログラムは、従来のOJT主体の教育から方針転換し、営業スタッフの入社後約10年を3段階に分け、それぞれのステージで育成の目標を細かく定めたものである。これらの目標にはCSの向上につながる要素が多く含まれているため、その面でも大きな効果をあげた。

バブル経済のころからは、消費者自らが商品をしっかり確かめて購入するという消費行動の変化も顕在化していた。こうした傾向に対応してトヨタ車への認知向上を図るため、新たな発想のショールームづくりにも取り組んだ。その代表格となったのが1990年9月に東京・池袋にオープンした大型施設「アムラックス東京」である。同施設は、市販車だけでなくモータースポーツなどさまざまなクルマ関連情報を発信する拠点となり、池袋の人気スポットとして定着していった。

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