第6節 戦後の事業整理と労働争議

第1項 新規事業の模索

トヨタ研究所

1945(昭和20)年10月には新規事業の研究を目的に、トヨタ研究所(所長:豊田佐助、次長:知久健夫)が元の第二寄宿舎(のち清和寮、現在の新本館付近)に設置された。占領軍の政策によって、自動車事業の継続が危うくなった場合、方向転換できるようにすると同時に、従業員の生活安定の一助とするため、自動車以外の研究、特に衣食住に関係する事項を中心に研究を進めた。具体的には、合成甘味料のサッカリンやズルチンの試作、菊芋からの果糖やシロップの試作、薬草栽培、薬品や石鹸の試作、ドジョウの人工養殖などの生物・化学的な研究や、積層乾電池、洋食器、高級玩具の試作など種々の試みがなされた。

その後、自動車事業の継続が可能になったことに伴い、トヨタ研究所の活動も自動車に関連した研究に重点が移り、歯車、騒音測定法、仕上面検査器、高周波乾燥法、電解研磨、薄型極板蓄電池(小型大容量蓄電池)など、物理・化学分野の多様な研究が行われた。例えば、電解研磨の研究では、機械的な切断または切削と電解研磨とを併用した「金属を切断又は研磨する方法」を発明し、特許を取得した。1

トヨタ研究所は、自動車製造の本格化とともに、1950年にトヨタ自工本体の研究部門に吸収された。

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