第9節 量産量販に向けての準備
第7項 トヨタ・テクニカルセンターの設置
テクニカルセンターの開設
1953(昭和28)年11月、挙母工場の東側に技術部門の新たな研究開発施設として、テクニカルセンター(技術本館)の建設が始まった。当時、トヨタ自工の経営基盤はまだ脆弱であり、設備投資には慎重な姿勢をとらざるを得なかった。1このような制約から、将来3階建てに増築することを考慮しつつ、テクニカルセンターは必要最小限の2階建て、延べ1,487坪(4,807m2)の規模で建設された。
テクニカルセンターは、1954年10月に完成したので、その前月に生産が始まったトヨペット・クラウンRS型は、創業以来の研究開発施設を利用して開発された最後の車両となった。1957年にアメリカへ輸出されたクラウンは、高速道路に適合できず、その輸出は一時中断されたが、アメリカ再上陸を期してテクニカルセンターで鍛え直された。テクニカルセンターの前途は、自動車先進国アメリカへつながる道でもあった。
完成時のテクニカルセンターは、設計室、デザイン室、図書室、青写真室、化学実験室、物理実験室、自動車実験室からなり、創業期の技術部門施設と類似の構成をとった。設備としては、最先端の試験用装置、実験・分析機器などを多数取り入れた。その後、テクニカルセンターの建物は、1963年10月に3階建てに増築された。
技術部門の施設については、技術の進歩とともに、拡充・強化・更新を継続的に進めてきた。そのなかでテクニカルセンターは、建設後50年目の2003(平成15)年12月竣工した新「技術本館」にその役割を引き継いだ。