第4節 中国地域への合弁進出
第1項 生産拠点の拡大
四川トヨタ自動車の設立
四川地区では、商用車の合弁生産プロジェクトを推進し、四川旅行車製造廠との間でマイクロバス「コースター」の生産交渉を進めていた。日本から完成車を輸出していたコースターは中国国内で人気が高く、中国の中央・地方政府および自動車メーカー各社が現地生産を熱望する車種でもあった。
このプロジェクトは、1993(平成5)年に日本でモデルチェンジするコースターの前モデル用金型と、間もなく生産終了する搭載エンジンのラインを日本から移設する計画であった。これにより設備投資額を節減し、価格を抑えた製品を提供することがねらいである。しかし、生産を予定していた「前モデル」などの部分が「自動車工業産業政策」における「技術移転を行う本国で生産を終了した製品のプロジェクトは認可をしない」という条項に抵触する恐れがあった。
しかしトヨタは、中央政府から要望されているコースターのプロジェクトを実現させるため、認可部署や四川省当局、四川旅行車との粘り強い交渉を行った。その結果、中国市場向けに新設計されたコースターで、同プロジェクトを推進することで合意し、1998年に四川トヨタ(現・四川一汽トヨタ自動車、SFTM)を四川旅行車50%、トヨタ45%、豊田通商5%の出資比率で設立した。同社は、2000年12月にコースター1号車のラインオフ式を行った。