「IMVプロジェクト」の始動

アジア地域での生産が拡大するのに伴い、域内で部品を相互補完する必要性が高まったため、トヨタでは1990(平成2)年にトヨタ・マネジメント・サービス・シンガポール(TMSS)を設立し、東南アジア諸国連合(ASEAN)の部品補完スキームであるBBC(Brand to Brand Complementation)の導入を図った。それ以降、関税恩典と量産効果によるコスト低減をねらった部品相互補完体制が整備され、トヨタではMSP(Multi Source Parts)/MSV(Multi Source Vehicle)と呼ぶ部品や車両の多国間物流が急速に拡大していくことになった。

トヨタは、こうした部品相互補完体制の拡充を進める一方、新たなグローバル事業として2002年に「海外市場専用車を海外のみで国際分業する」ためのプロジェクトを立ち上げた。「Made in Japan」や「Made in Thailand」ではなく、「Made by Toyota」の車を世界140カ国以上に供給する「IMV(Innovative International Multipurpose Vehicle)プロジェクト」である。プラットフォーム(車台)の共通化を図ったピックアップトラック(3車型)とミニバン、SUVでシリーズ化し、現地調達率100%を目標に相互補完することとした。

主要ユニットの生産は、タイでディーゼルエンジン、インドネシアでガソリンエンジン、フィリピンやインドでマニュアルトランスミッション(MT)などを分担し、車両組立はタイ、インドネシア、南アフリカ、アルゼンチンの4カ国で行う体制とした。2004年からIMVシリーズの市場投入をタイ、インドネシアで開始した。また、同年にはダイハツ工業との共同開発で、IMVよりも小型の「U-IMV(Under-IMV)プロジェクト」としてアバンザ(ダイハツ名「セニア」)の生産・販売をインドネシアで始めた。IMVはトヨタの多国間物流オペレーションにおけるノウハウの集大成が活用されたのみならず、新興需要諸国でのトヨタ車の販売シェア拡大を率先する存在へと成長していった。

IMVプロジェクトを統括した豊田章男専務は、2004年10月の社内報インタビューで、トヨタのグローバル化は世界規模でより効率的な供給体制を構築するチャレンジの段階に入ったとしたうえで、「世界各国のお客様へ同時期に、より魅力的な商品を、よりお求めやすい価格で提供できればと考えています」と語っている。

このIMVプロジェクトはその後、順調に生産および販売台数を増やし、プロジェクト開始から10年目にあたる2012年3月、世界での販売累計500万台を達成した。

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