トヨペット・マスターRR型の開発

RS型乗用車の開発と並行して、1953(昭和28)年10月には関東自動車工業製RHK型乗用車の後継車として、RR型乗用車の開発が始まった。

RS型乗用車が前輪独立懸架を採用したのに対して、RR型乗用車はRHK型を踏襲したビーム式前輪懸架である。その頑丈な構造から、使用条件が過酷なタクシー業界をターゲットとした。シャシーについては、RHK型乗用車から引き継いだ部品と、RS型乗用車と共用する部品で構成された。

RR型乗用車の開発責任者は主査室の薮田東三主査が務めたが、ボデーの設計は関東自動車工業がそれまでどおり担当した。RS型乗用車は完成車販売とする方針であったことから、関東自動車工業が行っていたRHK型乗用車の架装事業が消滅するため、急遽その後継車としてRR型乗用車を開発することになったのである。

RR型乗用車のシャシーは、トヨタ自工の挙母工場で製造され、そこからボデー架装のため、神奈川県横須賀市の関東自動車工業へ送られた。1954年3月にはRR型試作車の第1号が完成し、同年9月から量産を開始した。

RR型乗用車は、「トヨペット・マスター」と命名され、「トヨペット・クラウン」と同時に、1955年1月7日に発売された。両車種の詳細な仕様をスーパーRH型とともに一覧すると、表1-41のとおりである。

表1-41 クラウンRS型、マスターRR型、スーパーRH型の仕様(1955年)

項目
クラウンRS型
マスターRR型
スーパーRH型
全長
4,285mm
4,275mm
4,280mm
全幅
1,680mm
1,670mm
1,590mm
全高
1,525mm
1,550mm
1,600mm
ホイール・ベース
2,530mm
同左
2,500mm
トレッド(前)
1,326mm
1,317mm
1,325mm
トレッド(後)
1,370mm
同左
1,350mm
最低地上高
210mm
200mm
190mm
標準床面地上高
320mm
370mm
410mm
車両重量
1,210kg
同左
1,150kg
乗車定員
6人
同左
5人
最高速度
100km/h
同左
同左
エンジン型式
トヨタR型
同左
同左
シリンダー
直列4気筒
同左
同左
総排気量
1,453cc
同左
同左
最高出力
48HP/4,000rpm
同左
同左
最大トルク
10m・kg/2,400rpm
同左
同左
蓄電池電圧
12V
同左
6V
クラッチ操作形式
油圧伝導式
同左
リンク式
トランスミッション
前進3段、
シンクロメッシュ付
同左
前進4段
常時噛合いヘリカルギア
同左
選択摺動式
リモート・コントロール
同左
ダイレクト・コントロール
操縦装置歯車
ウォームおよびセクターローラー式
同左
同左
前輪車軸形式
ウィシュボーン式独立型
逆エリオット式Iビーム
同左
後輪車軸形式
半浮動式バンジョー形
同左
同左
ブレーキ形式
油圧浮動シュー式、
後2輪手動併用
同左
油圧内部拡張式
前バネ形式
コイル10巻
リーフ5枚
リーフ8枚
後バネ形式
リーフ3枚
リーフ5枚
リーフ9枚
フレーム形式
梯子形閉断面
梯子形コ断面
同左
(出典)
トヨタ技術会『技術の友』1955年7月15日

また、関東自動車工業では、トヨペット・マスターRR型のシャシーを改造し、変わり型ボデーを架装した「マスターライン」シリーズを開発した。同シリーズの車種としては、同年9月発売のマスターライン・シングル・ピックアップRR16型、マスターライン・ライトバンRR17型、1956年8月発売のマスターライン・ダブル・ピックアップRR19型があった。

その後、1956年12月にトヨペット・マスターRR型は販売が中止され、関東自動車工業はマスターライン・シリーズを中心に製造することになった。同シリーズは、1959年3月までに3車種合計で約1万9,400台が製造された。

なお、関東自動車工業では、既述のとおり、1957年7月にトヨペット・マスターRR型のボデーを利用し、初代「トヨペット・コロナST10型」を開発している。

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